ドグラのTRPG日記

TRPGをキッカケにして自分の人生を豊かにしたいと考えています

TRPG参考書籍:シグルイ

 

シグルイ 1 (秋田文庫 71-1)

シグルイ 1 (秋田文庫 71-1)

 

 

  最近、秋田書店から文庫版のシグルイが発刊された。個人的に思い入れの深い作品であるのにも関わらず、実家に蔵書がなかったため購入を決意した。

 

 最初にこの漫画を読んだのは、高校時代に入り浸っていた友人の家でオススメされた事がきっかけだった。当時まだ、中二病をこじらせていた私はグロイものに妙な執着を持っており、オススメされた瞬間に嬉々として飛びついた。ただこの作品は、普段読んでいた非生産的なエログロナンセンスな話とはまったく違うわけで、実際は封建社会の理不尽さや、登場人物の悲哀などを緻密に描写していく「凄絶な時代劇」である。当時の私は、読む前に思っていたのとは別の意味で衝撃を受け、家から少し離れたブックオフで立ち読みに興ずるようになった。また同時期に、インターネットでシグルイのファンサイトを検索するようになったのだが、今思えばあまり良くなかったと思っている。当時は雑コラやパロディイラストの全盛期で、「ぬふぅ」やら「ちゅぱちゅぱ」などといった単語が随所でネタとして扱われており、私も当然のようにその影響を受けた。そのことがきっかけで、私はこの漫画のことを「変態大決戦」としか見れなくなってしまい、本質的な部分を見過ごして、エログロナンセンスに貶めてしまったのだ。まったくもって残念なことをしたと思う。まあでも、その時の経験がこの漫画を最後まで読むモチベーションを与えてくれたのは事実だし、こうして28になってから全巻そろえるきっかけ作りにもなっているので、長い目で見れば悪くはなかった気もする。

 

 閑話休題。今回はこの漫画を「凄絶な時代劇」→「変態大決戦」と意識を変えて読んできた自分が、シグルイをTRPGの参考書籍として読んだ際に感じたことについて。

 まず結論から言うと、この漫画はTRPGにおけるシチュエーション作りや、セッション中の状況描写をするにあたって大変参考になる。

 シグルイは話の構成として、一人の登場人物の行動やそれに至る背景を、丁寧かつテンポよく描写する。この点は、特に個別導入系のゲームで、一人一人の描写を強化するシーン(OP、ED等)における状況描写やシーン自体の時間配分を見直してみるのに役に立つ。少し話がずれるが、この状況描写とテンポと言うのは曲者で、マスターとシーンプレイヤーが1:1で掛け合いする場面は盛り上がっている本人たちは非常に楽しいのだが、どうしても他のプレイヤーが暇になりやすい。そして、シーン描写とテンポは中々両立することが難しいので、上手なマスタリングをする上での課題だと感じている。また、OP、ED以外でもイベントシーン、特に回想シーンの描写でも活用できる。作中、とある登場人物が剣の道に行きるため、相違相愛の女性と婚約を交わした場所に生えていた大木をその女性に見立てて断ち切るシーンがある。このシーンは残酷且つ、暗示的で、こういった描写をシナリオに取り入れることは、内容に深みを与え、プレイヤーがセッションに没入する良いきっかけになる。

 次に参考になる箇所として、シグルイが封建時代の暗黒面をショッキングに描いている点だ。今でもTRPGと言うゲームジャンルにおいて、剣と魔法の中世世界は不動の地位を築いている。そして、中世をテーマに扱っている以上、王が支配し騎士が仕える封建社会は絶対に外せない。また、こういったシステムのシナリオは新たな英雄の誕生物語など、ヒロイックな内容であることが大多数である。このようなシナリオにおいて悪役の行う悪事はプレイヤーのモチベーションに大きく関わるため、誰の目で見ても非道かつ、悪役の立ち居地に沿う物(例えば、国の王が万引きして民を苦しめているとかだと笑い話になってしまう)でなくてはならない。現代の価値観でシグルイの悪役の行動を見てみると、自分たちの力と人数を過信して町民に暴力を働く野良犬共であったり、将軍になれなかった境遇にコンプレックスを抱き暴虐の限りを尽くす暗君だったりする。こういった設定は、プレイヤー達に大きな反感を与えるだろうから、モチベーション作りとしては充分すぎる。

 あと上記の点以外に、社会の重圧で仕方なく悪事を行わされる登場人物や、戦闘描写などもTRPGを遊ぶ上での参考となる。

 

 最後に、この本の問題点として、残酷描写にきつい部分があるので、万人受けでは無いというところか。ただそれを踏まえても、読むたびに新しい発見のある素晴らしい漫画であることは確かなので、読んだことがない方も、一度読んだことがある方も、触れてみることをオススメしたい。